なぜあなたは物が売れないのか?知っているだけで自在に物が売れる法則
こんにちは、土谷愛です。
誰かに何かを売る仕事をしていると、売れた経験・売れなかった経験それぞれあると思います。
ただ、物が売れる時のとある本質的な考え方を知るだけで、売れる確率が何倍にも上がる
そんな法則があるのをご存知でしょうか?
私は営業マン時代にこの法則を使って、入社1年でトップ営業マンにのぼり詰めました。
今日はこの「物が売れる本質」について、具体的な営業事例を使いながらわかりやすくお伝えします。
顕在客・潜在客の違いで感じた商品の売りにくさ
まず大前提となるお話をします。
これは以前、私が広告会社の営業マンをしていたころのお話しです。
その前は商社で食品を売る営業をしていたのですが、同じ営業といえど、初めは売る商品が食品から「広告」に変わるだけでかなり商品が売りにくいと感じました。
なぜ商品が売りにくいと感じたか。
それは「顕在(けんざい)顧客が少ない」という理由です。
顕在顧客というのは、すでにある程度のニーズがあることがわかっているお客さんのことです。
例えば広告業界の顕在顧客は、「集客」の必要性を感じていて、お金を出して集客したいと考えている人・企業です。
広告というとどうしても「集客に困っている企業が使うもの」というイメージがある人が圧倒的に多いのです。
でも実際には、現状で集客できずにお金がない企業が「さらに集客に投資しよう」と考えていることは稀で、たいていの場合は「まずは無料で地道に集客して、利益が出てきたらさらに広告を出そう」と考えるものです。
だから「広告で集客する必要性を何が何でも感じている」顧客はすでにニーズがあるので、顕在顧客となるわけです。
この顕在顧客に対して営業するのはとても簡単です。
しかし、それに対して、残りの大半の企業は「潜在(せんざい)顧客」と呼びます。
潜在顧客とは一言でいうと、「今はニーズがない(ように見える)お客さん」のことです。
ニーズが潜っている状態で、そこにニーズがあるのかないのか、表面的にはわかりません。
広告業界における潜在顧客はこんなことを考えています。
(1)お金がないから有料広告で集客したくない
(2)広告にお金を出してまでお客さんを集める、という考えがそもそも感覚的に嫌
(3)現状集客ができていて、集客に困っていないので広告は必要ない
このうち(1)の顧客に対しては、論理的に数字の話をすると比較的簡単に売ることができるのですが
厄介なのが(2)と(3)の顧客です。
それはなぜでしょうか?
(2)の広告が感覚的に嫌、という主張と
(3)の広告=集客するものだから集客に困ってない時は不要、という主張は
異なるもののように見えますが、実は根底にある考え方は同じです。
それは「広告=集客のために使うもの」という考え方です。
つまり、「広告は集客するためのもの」という前提の認識を変えてもらわない限りこれらの顧客は広告を買うことはないのです。
そして、人が大前提として持っている認識を変えることは、やってみると意外と難しいんです。
比較的売りやすい「顕在顧客が少ない」こと。
ここが、私が転職した当時「広告って売りにくいな…」と思った理由です。
人は欲しい未来に対価を払う
そんなわけで、売りにくい潜在顧客を相手にどう商品を買ってもらうか?と私は考えるようになっていきます。
そこで様々な営業スタイルを試行錯誤した末に出た結論が
「商品の特徴・機能を伝えるより、商品を買った後の未来を想像させられれば、売れる」
というもの。
どういうことか?をご理解いただくために、ちょっと具体的な事例を見てみましょう。
初対面・開始10秒で営業を断られた、とある病院Aの事例
とある病院Aの院長先生との商談に行った時の話です。
初めまして土谷です、と挨拶して名乗ると、次の瞬間に院長からこう言われます。
「●●先生の紹介で仕方なく会ったけど、僕は有料広告一切必要ないから、営業するだけ無駄ですよ」
もうこれ営業あるあるだと思うんですが、「営業マン」であるだけで警戒され、とくに何も売り込んでいないのに勝手に断られます。笑
ただ、営業はここからが勝負です。
院長がハッキリ断ってくれたので、こちらも「どうして必要がないとお考えなのでしょう?」と聞いてみました。
すると
「うちには患者が溢れるほど来てるんでね。お金出して集客なんてしたら待合室がパンクしてクレームだよ」
という回答。
お気づきかもしれませんが、この院長の言葉からするとやはり「広告は集客するためのもの」という考え方が根底にあるようでした。
この認識を変えることができなければ、売れない。
そこで私は院長にこんな質問をしてみました。
「すでにたくさんの患者様がいらっしゃるんですね…。その人数に対して先生お一人では、さぞお疲れじゃありませんか?」
院長の本当の悩みは何か?に迫る
「患者がたくさん来ている」という院長に対し、私は角度を変えて「院長の負担の大きさ」について聞いてみました。
すると院長はぽつぽつと本音を語り始めます。
・医師不足の中患者数が増えており、自分の負担も年々増えている
・お昼を食べずに診療しても終わるのは21時過ぎ
・これ以上患者が増えると身体的にキツイ
⇒だから「広告は出したくない」という一貫した答え。
さて、この院長にあなたならどう営業するでしょうか?
私はというと、さらにこんな質問をしていきました。
「院長先生はまだお若いですが、ご家族はいらっしゃいますか?」
すると、結婚してもうすぐ2歳になる子供がいる、と院長は言うのです。
「2歳っていちばん可愛い盛りですね。でも帰宅が21時過ぎるってことは、あまり会えない日も多いのでしょうか」
その私の言葉を聞いて、院長は次第に本当の悩みを語り始めました。
・帰宅すると2歳の娘と妻は寝ている
・すれ違い生活が寂しくて、一人で飲んで帰る日もある
・もっと子供の成長を近くで見ていたい
・妻と会話する時間も欲しい
お気づきでしょうか?
実は院長の本当の悩みは「患者が多い」ことではなく、「家族との時間が取れない」というものだったんですね。
その悩みを解決するためにできること
ここまで本音を引き出せれば、私が営業としてやることはひとつです。
「院長の本当の悩みを解決する方法」を提案すること。
家族の時間を逼迫するほど患者が増えてしまっているのは、本当に医師不足のせいだけなのだろうか?
という問いを投げかけながら
最後に私が提案したことは、「広告を使って、患者のターゲットを絞りましょう」ということです。
どういうことか?と言うと
増えすぎている患者の症状は多岐にわたっており、その中には「他の病院の方が適している患者」もいることがわかりました。
例えば院長の専門分野ではない科の患者が、単純に家が近いからという理由で通院していたりします。
だからこそ、例えば院長の持つ専門性を広告で強く打ち出していくことで、患者のターゲット層を絞っていく必要があるのです。
そうすれば、より院長の専門分野が活かせる症状の患者が集まり、逆に専門ではない症状の患者はそれを専門とする違う病院に行くようになります。
これは「広告=集客(患者増)」とは違う使い方を知ってもらう提案でした。
そしてここからが重要です。
ここまで話した後、私は最後に院長にこう伝えました。
「患者のターゲットを絞ることで全体数が減り、院長先生の身体的負担は軽減されます。
そして帰宅が今より1時間早い20時になれば、院長先生は娘さんの寝顔だけじゃなく笑顔が毎日見られます。
一緒にお風呂に入ることだってできるでしょう。
娘さんが寝た後は、奥様とゆっくり晩酌する時間も取れるかもしれませんね。
21時まで診療して一人で飲み歩く今の毎日を、家族と笑う幸せな暮らしに変えるお手伝いをさせてください」
さて結果はどうなったでしょうか?
もちろん、その場で契約書を書いていただくことができました。
メリットではなくベネフィットを伝えよう
さて病院Aの営業事例、いかがだったでしょうか。
私は5年間の営業経験の中で
たとえニーズが無いように見えても、出会って10秒で契約を断られても、
常に「この人の欲しい未来のためにできる事はないだろうか?」と考えていました。
今振り返っても、それが営業マンとして最も大切なことだったと感じています。
ビジネスの世界では、マーケティングを学ぶとしばしば「顧客はメリットではなくベネフィットを求めている」と言われます。
メリットとは商品の特徴や利点のこと、ベネフィットとは商品から得られる利益や恩恵のことです。
まさに今回ご紹介した事例と同じことですね。
私は広告を提案するとき、商品の特徴についての説明は必要最低限しかしていません。
実際このとき病院Aの院長にも、契約が決まるまでは「この雑誌のこのページのこの枠をいくらで買えます」といったような説明は一切しませんでした。
それよりも「広告を使って手に入る院長家族との笑顔ある生活」を出来るだけリアルに想像してもらえるような話し方を心がけました。
限られたごくわずかな時間で商品を買ってもらうために、お客さんが求めている話しかしない、と最初から決めていたからです。
注目して欲しいのは、私は出会ってすぐに「広告は買わない」と宣言されていること。
そして、そのたった1時間後には「広告を買います」とお客さん自らが契約書を記入していることです。
メリットよりベネフィットを伝えるだけで、ものの売れ方はこんなにも変わるということが少しでも伝わっていたら嬉しいです。
コメント
コメント一覧 (1件)
素晴らしい!具体的なアプローチが分かりやすかったです!